今月の主題
<トピックス>脳腫瘍に対するブレオマイシンの全身的投与療法
竹内 一夫
1
1虎の門病院脳神経外科
pp.66-67
発行日 1970年1月10日
Published Date 1970/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202940
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脳腫瘍の化学療法
原発性脳腫瘍では病巣部位が限局されているために,全身的化学療法はあまり効率的ではない.また脳には血脳関門という厄介な障壁が存在するために,よほどの工夫をするか,血脳関門が破壊されているような脳腫瘍でない限り,全身的に投与した制癌剤が有効濃度で腫瘍部分に到達することは困難であると考えられている.
制癌剤が臨床的に使用されはじめた初期には,ナイトロジェン・マスタードで代表される種々のアルキル化剤が全身的に投与されたが,著しい副作用ばかり目立って,効果のほうはさっぱりあがらなかった.そのため脳腫瘍の化学療法は一時忘れられていた.しかし約10年前に脳灌流法により主としてアルキル化剤が,さらに続いて持続的頸動脈内注入法により主として代謝拮抗剤が投与されるようになり,全身的化学療法では得られなかった効果が認められるようになった.また一方ではビンクリスチン・ビンブラスチンなどのアルカロイド製剤が,ことに転移・播種巣のあるものや再発した髄芽腫などに静注され,有効であったという報告もみられるようになった.たしかに局所的投与法では不十分な部位や範囲の腫瘍も少なくなく,全身的化学療法への期待も残されていた.この場合脳腫瘍に対して手術や照射療法を行なうと血脳関門が破壊されるために,その後に制癌剤を静注すればいっそう効果的であるという考えもある.
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