臨床メモ
下痢—むつかしい扱い方
松島 富之助
1
1愛育病院保健指導部
pp.1159
発行日 1969年10月10日
Published Date 1969/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202844
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"1日3-4回の下痢をしているので,ミルクを少なくし,離乳食も中止しているのですが,いっこうによくならないのです……"という訴えを聞くことが多い.熱もなければ,機嫌もよくて,食べたくてキーキー声をあげて泣きわめいている乳児である.下痢止めをもらってもあまり効果がなく,2週間から1カ月ぐらいもこんな症状が続いているというのである.
これは明らかに逆な治療方法と思われる.空腹になった腸や胃は激しい蠕動運動を起こし,腸の粘膜からは濃い粘膜が分泌されるので,"空腹による下痢"を誘発してくる.黒みがかった粘液便でしかも量は少ないが,粘液便があると"消化不良症"の便と古い教科書や育児書に書いてあるので,病気扱いされて,食餌制限を受けがちである.しかも機嫌が悪いのは,空腹によるものではなくて,一般状態が悪いためと解釈されることがしばしばである.
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