EDITORIAL
腎腫瘍
高橋 博元
1
1順大泌尿器科
pp.859
発行日 1969年8月10日
Published Date 1969/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202750
- 有料閲覧
- 文献概要
腎腫瘍にも良性のものと悪性のものとが当然あるが,前者は生前無症状に経過し剖検時偶然発見せられることも少なくなく,したがって臨床上問題となるのは悪性のものである.悪性のものは幼小児にみられるWilms腫瘍と,成人にみられる腎および腎盂癌が主要のものであり,肉腫その他は稀である.いずれにせよ早期発見と早期治療とが要提であることは,他の臓器の腫瘍と軌を一にしており,また通常腎は左右各1個あるので,治療後に再発・転移などが起こらなければ永久治癒の公算も大きいことになる.
古くより腎腫瘍の特徴に血尿,腎部の疼痛と腫瘤形成の3者が記載せられているが,この3者が,ことごとく発見せられれば他の諸検査を待たず診断は確定するとも申すべきもので,早期発見の時期はすでに失している場合が多い.早期発見には,幼小児では親による腹部腫瘤の発見,成人では血尿ことに無症候性のものを訴える人には躊躇なく泌尿器科医を訪ね,尿路などの精査に努めることの肝要なことを宣伝する必要がある.初発症状発生後専門医を訪れる間に経過せる時間の相違が,治療成績の良否をおおいに左右するという報告もある.
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.