EDITORIAL
全身性疾患と腎臓
浅野 誠一
1
1慶大内科
pp.1068
発行日 1968年9月10日
Published Date 1968/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202357
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全身性疾患が起これば,どの臓器でもその影響を受けて形態的にも機能的にも変化を示すのは当然である.腎はその構造的の特殊性と体液homeostasis維持の機能と不要物質の排泄口である点から,全身性疾患の際にも,他の臓器と異なった態度をとったり,影響を受けたりする.
循環面において,腎は平常,心送血量の20-25%の大量の血液が分配されているので,循環が不全となると,すみやかに腎機能も不全に陥りやすいことになる.心不全の際にうっ血腎と称せられる病態になるが,うっ血とともに腎血流量は心送血量減少よりもひどい程度に減少し,いわゆるうっ血性心不全の症候群の成立に重要な役割を果たしている.また大きな外傷,火傷,手術,脱水,激症の感染などで起こる末梢性循環不全のときにも,血圧低下,循環血量の著減にともなって腎血流が著しく減少するために,糸球体濾過も尿細管の選択的再吸収もはなはだしく障害されて,たちまち尿生成不能,無尿に陥る.このような急性腎不全は他の臓器にはみられない病態で,十分な腎血流量と一定の血圧のもとに作業する腎は,体の中で最も高圧のもとに作業する臓器であることの宿命である.
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