ずいひつ
身体の知恵
時実 利彦
1
1東大脳研生理
pp.228-229
発行日 1968年2月10日
Published Date 1968/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202105
- 有料閲覧
- 文献概要
ホメオスタシスという身体の知恵
"The Wisdom of the Body"—身体の知恵—アメリカの生理学者W. B. Cannonが,かれのライフワークをまとめて,1935年に出版したモノグラフの題目である。
かれは,動物や人間に強烈な刺激(ストレス)が加わると,自律神経やホルモンのはたらきによつて,身体のなかの状態(内部環境)をその刺激に対抗して,できるだけ恒常にたもつようなしくみがちやんとそなわつているという。つまり,恒常性維持(ホメオスタシス)のしくみという"身体の知恵"によつて,身体の健全な営みが理性や知性の助けをかりないでも行なわれているというのである。気温が変わつても,私たちの体温は一定にたもたれているし,食物がどんなに違つていても,血液の成分は一定しているし,心臓や肺や胃や腸など,状況に応じてそれぞれ合理的にはたらいている。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.