遺伝医療ってなに?・11
生きる知恵としての「遺伝」
櫻井 晃洋
1
1札幌医科大学医学部遺伝医学
pp.1456-1457
発行日 2015年11月15日
Published Date 2015/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200632
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遺伝子解析が簡便で安価になり,人々が簡単に遺伝情報にアクセスできる時代になったが,生涯変わらず,血縁者も共有し,将来の健康状態をある程度予測できる遺伝情報を適切に扱うためには,医療者か一般市民かを問わず,誰もが最低限の遺伝に関する正確な知識をもつ必要がある.特に,これからのゲノム社会を生きる若い世代では,遺伝の知識は生きる知恵として,自らを守る盾として必須のものである.では,それはどこで身に付けるべきものだろうか.その答えはもちろん,医療者に対しては大学の専門教育のなかであるように,一般市民に対しては,初等・中等教育のなかでなければならない.
数年前に,一般市民や大学生を対象にして遺伝に関する意識や知識についてのアンケート調査を行ったことがあるが,例えば,“遺伝性疾患の治療には遺伝子治療が必要か?”という問い(もちろん答えはNoである)には,40%あまりがわからないと答えたが,同じく40%あまりの回答者はそう思う(どちらかといえばそう思う)と答えた.また,“遺伝性疾患の人に遺伝子治療を行えば,病気が子どもに伝わるのを防ぐことができるか?”という問いについても同様で,約半数がわからないと答えているなかで,30%強はそう思うと答えた.いずれも,回答をした人だけをみれば,正解者よりも誤答をしている人のほうが多かった.また,“遺伝子組み換え食品を食べることで人の遺伝子が変化する可能性があるか?”という問いでも,34%はそう思うと答えた.この問題は,別の調査で高校生に“DNAを食べたことがあるか?”と質問したところ,かなり多くの学生が“ない”と答えたという点に似ている.
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