特集 尿糖
尿糖の症例
9.腎疾患と糖尿
兼子 俊男
1
1東大・吉利内科
pp.209-210
発行日 1967年2月10日
Published Date 1967/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201663
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尿細管は糸球体濾液中のブドウ糖を全部再吸収するので,腎疾患で糖尿の認められるのは,尿細管でのブドウ糖再吸収量が減少した場合で,これは一般に腎性糖尿とよばれるものである。このように尿細管機能の異常によつて,単一のある物質のみの再吸収が障害されて,その物質が尿中に出現する疾患としては腎性糖尿,glycinuria,phosphaturia,renal acidosisがあげられるが,腎性糖尿をのぞいて腎疾患に糖尿のみられる場合は,比較的まれなことで,ネフローゼ症候群のさいに一過性に糖尿のみられる場合と,腎疾患末期で広汎な尿細管機能の障害を伴う場合のほかには,特殊な遺伝性疾患としてphospho-gluco-aminoaciduriaがあげられる。これはいわゆるFanconi症候群とよばれていたもので,尿細管の単一物質の再吸収障害と異なり,近位尿細管のmultiple dysfunctionによつて起こる疾患である。
phospho-gluco-aminoaciduriaはもともとDe Toniが1933年に酸性症,hypophosphatemia,腎性糖尿,腎性くる病を伴った侏儒症の1例を報告して,これが尿細管機能障害による新しい症候群であろうと指摘したことから始まったものである。
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