私の意見
身体医学と精神医学の間—頭部外傷後遺症をめぐつて
小西 輝夫
1
1松下病院神経科
pp.1594
発行日 1966年11月10日
Published Date 1966/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201554
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外来患者の1/4が頭部外傷後遺症
頭部外傷後遺症をこんなにもひんぱんにわれわれ精神科医が扱うようになつたのはいつごろからであろう。学生時代の講義で脳振盪性精神病や外傷性神経症のことは聴いたが,草深いいなかの精神病院に勤務しているうちにそんなことはすつかり忘れてしまつていた。最近縁あつて衛星都市にある総合病院の精神神経科に勤めるようになつて驚いたのは,外来患者の約1/4が頭部外傷後遺症の患者だということである。いままでのんきに宗教精神病理学などという妙なものに首をつつこんでいたのが,急にGibbsのAtlasとくびつぴきで脳波を読んだり超音波脳検査装置を操作したりしなければならなくなり,交通戦争をあらためて身近かに実感したしだいである。頭部外傷患者を扱つていてその頑固な愁訴にも手こずるが,もつと困るのは被害者(患者)と加害者の対立になんらかのかたちでまきこまれてしまうことである。最近59歳の女子患者を診察した。軽四輪にはねられて脳振盪を起こし,外科病院に2週間入院していたが退院後もふらつきや頭重感がとれぬという典型的な頭部外傷後遺症の患者である。
このごろ脳波がずいぶん一般にも知られているとみえ,脳波をとつてほしいというのが受診の理由である。
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