今月の主題
ポリープの鑑別診断
崎田 隆夫
1
,
福富 久之
1
1国立がんセンター内科
pp.342-343
発行日 1966年3月10日
Published Date 1966/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201209
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ポリープという言葉は,もともと多足という意味で,動物用語として腔腸動物のヒドラのような形態の名称として使用されていたが後医学用語に導入され有茎腫瘤に対して用いられるようになつた。おそらくその動物の形か,硬さか,再生力の強い点か,そのいずれかに類似しているものとして使用されたのであろう。しかし近年病理組織学的な研究が確立されてきてから,ポリープという言葉の使い方に混乱が生じてきた。われわれはこの胃ポリープの定義を胃内腔に隆起した良性病変と考えている。これを病理組織の上で分類すると上皮性のものとして粘膜性の腺腫様ポリープ,粘膜下性の過誤腫性ポリープ,非上皮性のものとして粘膜下性の炎症性ポリープ(たとえば好酸球性肉芽腫)粘膜下性の腫瘍性ポリープたとえば(筋腫)などがあげられる。臨床家として問題になるのは,これらポリープと隆起型早期がん(IおよびⅡa)との鑑別診断であろう。その点についておもな鑑別点を述べてみる。
第一に胃内腔に隆起した病変が粘膜性のものか,粘膜下のものか,胃外性の隆起であるかの鑑別診断である。粘膜性のものは周辺と明瞭に区画され鋭角に隆起し表面の凹凸,発赤,出血,びらんなどの変化がみられることが多い。粘膜下の腫瘍では表面粘膜に変化なく周辺よりなだらかに隆起しBridging foldといつて粘膜のひだが腫瘤の上をとぎれることなく橋をかけてまたぐ現象がみられる。
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