症例 肺がんとまちがわれた症例(3)
肺化膿症
金上 晴夫
1
1国立がんセンター・呼吸器科
pp.1861-1865
発行日 1965年12月10日
Published Date 1965/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201112
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肺がんと鑑別を要する重要な疾患
—高年者の肺化膿症—
高年者の肺化膿症の原因のうちで,肺がんがかなり大きい比率を占めているといわれている。事実発熱を伴い,胸部レ線上空洞を伴う陰影で肺化膿症と診断されて治療していたものが,喀痰申からがん細胞を発見して肺がんであると判明した症例もあり,同様な所見を肺がんと診断されて治療しているうちに,抗生物質の長期投与が奏効して陰影の消失を見,肺化膿症であることがわかつた症例もある。したがつて高年者の肺化膿症は肺がんと誤まられるというよりは,肺がんと鑑別を要する重要な疾患といえよう。
肺化膿症が肺がんと誤まられる原因の一つとしては,高年者の肺化膿症の原因のうちで肺がんの占める比率が多いという理由のほかに,肺化膿症がその時期によつて内容が充実して,腫瘍性陰影を示すことがあるということ,また肺がんの症例のうちで,空洞を示すことが,しばしばみられるという理由によるものといえよう。もちろん,自覚症状という点からいつてもせき,たん,血痰,胸痛,発熱と両者に共通した諸点がある。
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