診断のポイント
心尖部で聞かれる収縮性雑音
太田 怜
1,2
1自衛隊中央病院内科
2東大
pp.1493-1495
発行日 1965年10月10日
Published Date 1965/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201016
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病的と判断するには
心尖部で収縮性雑音をきいたとき,一番大切なことは,そのことだけで,弁膜症という診断を下さないことである。すなわち,収縮性雑音は心外性の原因できかれることもあるし,生理的にきかれるものも,かなり多いからである。病的状態では心臓になんらかの負担がかかつてきていることが多いので,収縮期雑音をきいたときは,たとえば,X-線検査や心電図を参照して,雑音以外に,心臓に負荷のあることを確かめた上で,この雑音を病的なものと判断した方がよい。たとえば,きわめて軽微な器質的僧帽弁閉鎖不全があつたとして,心尖部収縮期雑音以外に,まつたく異常所見を見出すことができなかつたばあい,その雑音を無害性のものと解釈しても,全体的な病気の診断は,むしろその方が正しいということができる。
リウマチ性心内膜炎のとき,心尖部で著明な収縮期雑音がきかれる。しかし,治療によつて,この雑音は,だんだん弱くなつてゆくことが多い。そして,最後にはわれわれが日常きいている無害性収縮期雑音とまつたく変わりないものとなる。このとき,心陰影も正常で左房左室負荷像がなければ,器質的な弁膜症は残さずに治癒したと見るべきであろう。ただし,このような病歴がはつきりしていれば現在無害性雑音と思われるものも,真に無害性であるかどうか確証はないので,心臓の負荷像を丁寧にしらべる必要があるし,リウマチ活性の検査も,このような例では行なう必要がある。
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