ファースト・エイド
急性腹症のX線診断—そのとり方
石川 誠
1
1東北大内科
pp.1229-1232
発行日 1965年8月10日
Published Date 1965/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200957
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
急性腹症は急激な体性痛をきたす代表的なものであり,多くは緊急手術の対象となる。すなわち,その痛みは側壁腹膜,腸間膜根,小網ならびに横隔膜などに病変がおよんで,その部に限局して起こる痛みであり,また非対称性の持続性の痛みで,体動によって増悪するなどの特長がある。この際内腔臓器の伸展や痙攣に伴う拡張などによる内臓痛も加われば,その特長である悪心,嘔吐顔面蒼白,発汗などをきたすのが普通である。なお,内臓痛は躯幹の中心線上に対称性に起こり,体動により痛みの程度は軽減する。そして胃,十二指腸,胆管,膵管性の内臓痛は心窩部に,小腸性のは臍膀周囲に,上行・横行結腸の拡張痙攣では臍下部に,肝・脾屈曲部のそれでは,それぞれ右または左季肋部になどと一定の部位に周期性におこるものである。この内臓痛には鎮痙剤が奏効し,一般に外科的処置を必要としない。
急性腹症では,主として激烈な体性痛,それに内臓痛や,それぞれの連関痛も加わつて起こるものであり,実際にはつぎのような疾患が含まれる。すなわち,(1)胃腸管などの穿孔,(2)腹膜炎,(3)胆石に化膿性胆嚢炎や胆道炎を合併したもの,(4)腎盂結石および腎周囲膿瘍,(5)各種絞抱性イレウス,(9)急性膵壊死,(7)嚢腫の茎捻転,(8)腸間膜血管の栓塞または血管痙攣,(9)腹腔内大出血,(10)脊髄癆による神経発症などがある。
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.