症例
高年者腰痛患者のレ線所見
恩地 裕
1
,
立松 昌隆
1
,
金曽 啓時
1
1奈良県立医大整形外科教室
pp.1069-1073
発行日 1965年7月10日
Published Date 1965/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200916
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高年者腰痛を扱う上の注意
高年者,主として50歳以上の患者で,腰痛を主訴として来院するものが非常に多く,その症状も人により多種多様で,その確定診断,ならびに治療に困難を覚えることは内科医,外科医を問わずしばしば経験されていることと思う。このような高年者腰痛患者の脊椎レ線像,とくに,その腰椎部レ線像でもつともしばしば遭遇する所見は椎問腔の狭小化,椎体辺縁部の骨堤隆起,椎体のレ線透過度の増加,椎体そのものの変形,ならびに脊柱配列の異常などである。すなわち,変形性脊椎症,骨粗鬆症,ならびに仮性辷り症などが一般的所見である。しかし,高年層にあつては脊椎の転位性癌に対する考慮も忘れてはならない。いま一つ,高年者の腰痛を取扱う上で,股関節の変化,とくに女性に多く見られる変形性股関節症の存在を忘れてはならない。患者の訴えだけを重視し,おうおうにして変形性股関節症の存在を見逃すことがある。
今回はもつとも一般的に見られる変形性脊椎症,骨粗鬆症のレ線所見を主として述べることにする。ここでいう骨粗鬆症とは主として,更年期骨粗鬆症,ならびに老人性骨粗鬆症のことであるが,この骨粗鬆症の病態について若干ふれてみると,骨粗鬆症というのは,字に示されているごとく,骨が粗になることであり,それがとくに脊椎ならびに骨盤など,海綿骨に著明にあらわれ,レ線所見ではその透過度が増加し骨の陰影がうすくなつてくる疾患である。
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