メディチーナジャーナル 循環器
Digitalisの予防的投与
小沢 利男
1
1虎の門病院・循環器科
pp.616
発行日 1965年4月10日
Published Date 1965/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200801
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近年心臓などの大手術が盛んになるに伴つて,心疾患の手術に際しては,心不全の有無に関せず,術前にDigitalizationする傾向が多くなつたようである。Digitalisの適応はいうまでもなく,うつ血性心不全ならびに心房細動,心房性頻脈などの不整脈にあり,心不全のない限りDigitalisの使用は控えるべきであるというのが従来の一般的な考えであつた。これは主として正常心にDigitalisを投与した場合に心榑出量の減少が認められるという事実に基づくものであるが,この点からすれば術前のDigitalisの投与の可否も大いに論議のある所といわねばならぬ。しかしDigitalisの作用は,はたしてこのように健常心と不全心とで相反するものであろうか。最近心カテーテル法の長足の進歩とともに,心搏出量などの循環諸量がより正確に測定せらるるに及んでこの問題は再び各方面より検討されてきている。
すなわち,最近の研究によればDigitalisを健常心に投与した場合,心搏出量は必ずしも減少ぜず,不変の場合もまた時には増加する場合もある。従来の心搏出量が減少したという報告は,Selzerによれば,その殆んどが検査方法もしくは検査結果の検討の不備に基づくものであり,心カテーテル法を駆使した最近の報告70例をまとめた結果では,健常心の心搏出量に及ばすDigitalisの作用は一定した傾向を示さないという。
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