治療のポイント
胃潰瘍の薬物療法
和田 武雄
1
1札幌医大内科
pp.697-699
発行日 1964年8月10日
Published Date 1964/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200410
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成因による治療の考え方
胃潰瘍は十二指腸潰瘍とともにいわゆる消化性潰瘍として同じ範疇に入れられている。しかし成因からみると多くの共通面はあるが,また幾多の相違点もある。胃潰瘍の好発年齢は十二指腸潰瘍のそれよりもやや高年にみられるし,逆に老年者の胃潰瘍は少なくないが,十二指腸潰瘍はむしろ稀である。胃潰瘍そのものについてもそうした成因に関連する諸因子の考察をしていくと,十二指腸潰瘍に似た性格を示す胃潰瘍と似ない胃潰瘍を区分できる。老年性潰瘍や慢性胃潰瘍の多くは後者に属する。つまり以下に述べる成因にも関係することであるが,少なくともその潰瘍症が年齢的に若い層にみられがちな自家消化能亢進性の,いわば十二指腸潰瘍であるか,壮年以後あるいは下垂体質をもった婦人などにみられる胃粘膜抵抗減弱型であるか,などによって多少治療方法を変えることを考えている。前者については心因性の要因を重視して安定剤・鎮静剤・節遮断剤を伍用し,とくに胃液消化度の亢進状態を調整する。後者については主として粘膜庇護剤を与え,腸溶性消化酵素剤,膵酵素あるいは利胆剤などを伍用して,肝膵機能障害時に潰瘍の発生しやすい要因を除くことを考える。
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