えでぃとりある
リウマチ性疾患分類の混乱
佐々木 智也
1
1東大物療内科
pp.665-667
発行日 1964年8月10日
Published Date 1964/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200400
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命名,分類の混乱
rheumatismはギリシャ語に由来するまことに古い言葉で,人間とリウマチとの結びつきも長い歴史をもつている。外国の例はともかくとして,日本国内で発掘された最古の人骨の一つと推定されている平坂人の左第1中足骨々頭には明らかな骨縁堤の形成がある。日本人に見出された最古の病気はリウマチ性疾患である。現代の日本人について住民調査を行なつてみると,報告者によつて多少の差はあるが,ほぼ5〜10%の住民になんらかのリウマチ性疾患があり,この数字は西欧諸国・米国の調査結果とだいたい等しいものである。
かくのごとくまことに古く,かつ普遍的な病気であるリウマチ性疾患は,実地医家にとつてもおなじみの病気であるはずであるが,これほどに同一患者に医師により異なつた病名が与えられるものも少ないのではないかと思う。この原因の一つは,病因の明らかでない多くの疾患を含むリウマチおよびその近似疾患を理解することの困難さのゆえに漠然とした知識のうえで診断をくだす点にもあるが,いわゆるrheumatismの診療を専門とする者にとつて見逃がすことのできないのはその命名,分類の混乱である。現在までに発表された命名法,分類法を熟知した専門家の問においてすら,同一患者にまったくニュアンスの異なつた病名が与えられる可能性がある。
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