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胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)は近年,欧米だけでなく,日本を含むアジア各国で,著しく増加しており,上部消化管の臨床で最も頻度の高い疾患の一つである.GERDは,酸性の胃内容物が食道に逆流することで,下部食道の粘膜傷害を惹き起こすばかりでなく,一見,無関係にみえるようなさまざまな病態が出現する.診療頻度の増加に加え,非定型症状のために消化器内科以外の診療科における関心も高まっており,日常診療のなかでの比重はますます大きくなってきている.さらに,医療関係者,患者,あるいはマスコミを含めたいわゆる「世間」の関心の高まりも,診療機会を増やすことに繋がっている.
GERDは酸性胃内容物の食道内逆流によって起こる病態であるが,逆流の発生機序と,逆流の結果起こるさまざまな問題など,多彩な局面が存在する.最近のGERDおよび関連疾患の増加には,メタボリックシンドロームと共通基盤を有する栄養や肥満の問題,H. pylori感染の減少にかかわる衛生環境の問題などの社会経済的要因が影響しているといえる.つまり,社会環境の変化を抜きにしてGERDを考えることはできないし,一方で内視鏡所見や症状評価の問題,逆流と関連する食道外症状の問題,逆流性食道炎の合併症としてのBarrett食道とさらには下部食道腺癌(Barrett腺癌)の問題など,重要なテーマが,きわめて多彩に存在している.特に食道腺癌は欧米で急激な増加が認められ,食道癌の半数以上を占めるようになっているものの,わが国ではまだ数%に留まるなどの違いがある.しかし,今後,日本でも増えていく傾向は出てきている.一方で,超高齢社会の到来も大きな要因である.GERDは高齢者に多い疾患で,亀背,NSAIDsの服用など,高齢者に多い問題点と病因が共通する点も重要である.
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