書評
―鳥羽研二 編著―高齢者の生活機能の総合的評価
横手 幸太郎
1
1千葉大学大学院
pp.388
発行日 2011年3月10日
Published Date 2011/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105094
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わが国の成人男女を対象としたある保険会社の調査によれば,“長生きすることに不安を感じる人”が全体の9割に上るそうである.ちなみに,不安に感じる理由のトップは「お金」と「病気・入院」,そして「介護」が続いたという.洋の東西を問わず,長生きはめでたく喜ばしいことであったはずなのに…….経済の先行きにも希望が見えてこない日本社会は,これまで世界中の誰も経験したことのない“超高齢社会”に 今後どう対応していけばよいのか?
本書には,高齢者医療に対する考え方を根本から変え,介護予防の世界にパラダイムシフトをもたらすヒントがある.編著者の鳥羽研二氏は,そもそも高齢者は何らかの病気をもっているものだというスタンスで本書を書いている.そして,持病がありながらも生活上の不自由さを感じていないのが高齢者の特徴の一つであり,いったん入院を経験すると退院後も生活機能が低下したままになりやすいことが若者との違いである,と説く.核家族化の進行による独居老人や老老介護家庭の増加を考えると,生活機能の低下は生存に対する大きな脅威でもあるのだ.
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