今月の主題 抗菌薬の使い方を究める
各抗菌薬の特徴と使い方
ケーススタディ:リネゾリドの使い方の実際
松永 直久
1
1東京医科大学病院感染制御部
pp.645-649
発行日 2010年4月10日
Published Date 2010/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402104407
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Case 1
72歳男性.喫煙者.うつ病,糖尿病の既往歴.糖尿病はインスリンでコントロールされている.胃がんに対する胃全摘術を7日前に施行.3日前から創部の発赤を認め,本日創部から滲出液を認めるようになった.体温38.1℃,創部の発赤,腫脹,熱感,圧痛のほかは特に異常所見なし.浸出液のグラム染色では,白血球とブドウの房状に集簇したグラム陽性球菌が観察されたため,バンコマイシン1回1g 12時間ごとの経静脈投与が開始となった.培養の結果はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus:MRSA)で,バンコマイシン(S),テイコプラニン(S),アルベカシン(S),エリスロマイシン(R),クリンダマイシン(R),ST合剤(S),ミノサイクリン(R),レボフロキサシン(R),リネゾリド(S).
バンコマイシンの血中濃度測定ではトラフ値が15μg/mlであった.
バンコマイシン投与後も創部からの滲出液や炎症徴候に改善傾向はなく,体温も37℃後半から38℃前半で推移していた.他の身体所見は変化なし.白血球数8,300/μl,好中球83%.バンコマイシンのMICは2μg/ml以下との報告であったが,E-testを施行したところMIC 2μg/mlとの判定であった.
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