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わが国の脳卒中診療を取り巻く環境は,2005年10月の急性期脳梗塞へのtissue plasminogen activator(t-PA)静注療法の承認を契機に,大きく様変わりした感がある.この承認の直後の『medicina』2006年2月号(第43巻2号)で,山脇健盛先生(当時・名古屋市立大学神経内科/現・広島大学脳神経内科)が「ブレインアタック2006 tPA時代の診断と治療」という特集を組まれてから3年を過ぎたが,この間にも頸動脈狭窄症へのステント留置術の承認,脳卒中ケアユニット入院医療管理料や脳血管疾患等リハビリテーション料,超急性期脳卒中加算の新設,脳卒中病院前救護コースの開催など,脳卒中診療を後押しする出来事が続いた.特に2007年に施行された第五次改正医療法で,四疾病(がん,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病)・五事業(救急医療,災害時医療,へき地医療,周産期医療,小児医療)の医療連携体制構築が記され,脳卒中や救急医療への注目度がさらに高まった.国を挙げた脳卒中診療への支援を求めて,脳卒中対策の法制化に向けた取り組みも進んでいる.脳卒中はもはや「治らない病気」ではなく,「治る病気」,「治すべき病気」として認識されるようになった.このような追い風の一方で,近年のいわゆる医療崩壊現象は,けっして楽ではない脳卒中診療にも大きな不安の影を落とす.団塊の世代が脳卒中適齢期を迎え,脳卒中診療への需要がより高まる今日,その担い手である専門医を中心に,一般医家,救急科医,コメディカル,救急隊や介護職員などが効率よく連携して,脳卒中の予防と脳卒中患者の社会復帰に努めなければならない.
今回の特集では,脳卒中診療の追い風と向かい風を肌で感じながら,現場で指揮官として働く方々を中心に,執筆を依頼した.全体を4つの章に分け,脳卒中の基礎知識,救急時の連携,急性期治療と再発予防,最新のトピックスを,それぞれ平易な文章で論じていただいた.また座談会では,医学生の教育から一般医家との連携,理想的な脳卒中チームの構築まで,自由な意見を論じていただいた.この特集号が,脳卒中患者と向き合って日々の診療を行っておられるさまざまな領域の方々の役に立てば,幸いである.
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