今月の主題 ガイドラインを基盤とした心不全の個別診療
扉
吉村 道博
1
1東京慈恵会医科大学循環器内科
pp.1211
発行日 2009年8月10日
Published Date 2009/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402103996
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心不全とは,心臓の機能低下により心拍出量の低下や血液のうっ滞が原因で生じる1つの症候群である.その直接の原因は心臓のポンプ機能の低下であることは言うまでもない.数百年の循環器病に関する学問の中で,心血行力学は研究の中心であり,多くの先人の努力のお陰で膨大な知見が蓄積されてきた.
さて,一方で神経体液性因子の立場から心不全を捉える動きが数十年前から徐々に起こってきた.心機能が低下すると心拍出量の減少や血圧が下がるが,それに対する代償機序として内因性に,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)や交感神経系が活性化する.これらは体液量を増やし血圧を維持する.しかしながら,結果的にそれらの活性は過剰となり,かえって心不全を悪化させる.しかし,生体は興味深いことにこれに対しても防御機構を備えている.その代表がナトリウム利尿ペプチド(ANP,BNP)であろう.何らかの理由で心機能が低下すると,心臓から多くのANP,BNPが分泌される.ANP,BNPは種々の作用でRAASや交感神経系と拮抗し,心不全の病態を鎮めようとする.1984年の松尾・寒川両博士によるANPの発見以降,心臓研究はホルモン学と歩調を合わせて大きく進展した.そしてさらに心臓研究は進歩し続けている.
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