特集 臓器全摘術の適応と問題点
Editorial
島津 久明
1
Hisaaki SHIMAZU
1
1鹿児島大学医学部第1外科
pp.947-948
発行日 1990年8月20日
Published Date 1990/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900152
- 有料閲覧
- 文献概要
近代外科学の目覚ましい進歩によって多くの臓器の全摘術が可能になり,その標的臓器のなかには,生命維持に重大な影響を及ぼしかねないものも少なからず含まれている,悪性腫瘍が対象疾患になることが多いが,大腸腺腫症や潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘術,急性膵炎や慢性膵炎に対する膵全摘術などのように,良性疾患に対して実施されることも稀ではない.
臓器全摘後には,当然のことながら,その臓器がもつ機能は全面的に廃絶されることになるが,それがもたらす状況にはいくつかの局面がある.第1は究極的な問題で,生命維持に関連するものである.その病態の重症度や対策の難易にはさまざまな差異があるが,いずれにせよ,的確な対策の実施は必須で,それがなければ,やがて死の転帰をとることになる.たとえば,胃全摘術後における内因子の欠落はビタミンB12の吸収障害をひき起こし,放置すれば,数年以降に悪性貧血が必発する.しかし,その発生はビタミンB12の予防的な非経口的投与によって阻止され,また,たとえ発生しても,同様の治療によって比較的容易に治癒させることができる.
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.