特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第7集
免疫学的検査
自己免疫関連検査
抗Scl-70抗体
上阪 等
1
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科
pp.426-427
発行日 2005年11月30日
Published Date 2005/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101854
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
抗Scl-70抗体は強皮症(scleroderma)に特異的に出現するとして報告された自己抗体である.Sclはsclerodemaの略で,70は抗体の反応する抗原の分子量が70kDaであったことに由来する.同じ抗体は,Og抗体など他の名称でも呼ばれた.その後,対応抗原が細胞核内に存在するDNAトポイソメラーゼIであることが明らかになり,さらに分子量も実際は100kDaで,当初報告された70kDa蛋白はトポイソメラーゼIが部分分解されたものであったことがわかり,近年は抗トポイソメラーゼI抗体と呼ばれることもある.
トポイソメラーゼI は二本鎖DNAの超らせん構造を巻き戻す酵素の1つで,遺伝子発現や複製といった細胞の基本機能にかかわる酵素である.血清中に検出される本抗体が,細胞核内のかかる酵素を抑制して症状を起こす可能性はまず考えられない.この抗体も,他の自己抗体の多くと同様に,産生メカニズムは不明である.しかしながら,強皮症の診断や予後の推定に役立つ重要な自己抗体である.
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