- 有料閲覧
- 文献概要
超音波検査は,下腹部痛をきたす各種疾患の確定診断と適切な治療法選択に役立つ有力な情報を与えてくれる場合が多い.したがって,下腹部痛患者が来院した場合,腹部単純X線検査とならび,ファーストチョイスの検査法として超音波検査を行うのが望ましい.ただし,超音波検査には,簡便かつ非侵襲的に広い範囲の臓器が検索できる大きな利点があるが,①術者の経験や知識により診断精度に差がみられる,②客観性に欠ける,③患者の体型・症状によっては十分な検査ができない,という欠点もあり,必要に応じてCT(婦人科疾患などにはMRI)などの併用を躊躇してはならない.特に急性腹症では,患者の状態に応じて臨機応変な対応が求められる.
下腹部痛を主訴とする疾患は数多く認められ,超音波検査に際して,個々の臨床症状や特徴的超音波所見を認識しておかねばならない.図1に臨床症状と予測される疾患を示したが,痛みの場所,強さ,間欠的疼痛か持続性疼痛か,急性発症か慢性的な痛みか,女性か男性か,などによって予測される疾患をある程度絞ることが可能である.例えば,右下腹部痛をきたす代表的疾患として,急性虫垂炎,大腸憩室炎,腸間膜リンパ節炎などが挙げられる.しかし女性で持続的な痛みであれば,急性付属器炎,卵巣出血,子宮外妊娠破裂,卵巣腫瘍茎捻転などの婦人科疾患を考慮する必要がある.また間欠的な痛みであれば,感染性腸炎,Crohn病,腸重積症などの消化管疾患も念頭に置いて検査を進めることになる.通常病変に一致した部位に圧痛を訴えるが,必ずしも痛みの強い部位にだけ病変が存在するとは限らないため,症状のある部位のみならず全体を観察する姿勢が大切である.特に消化管病変は,後述されている個々の疾患の特徴的超音波所見を熟知し,高周波のプローブを使用するなど工夫しながら注意深く検査することが疾患の診断あるいは推定につながる.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.