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近年の高齢化社会の到来によって,高齢者は高血圧患者のなかで最も多い構成集団となっている.降圧薬治療の有用性を証明した大規模臨床試験のほとんどは,その対象の半数以上に高齢者を含み,これらのエビデンスが示すものは高齢者を含んだ高血圧患者における降圧薬の有用性と解釈すべきである.したがって,70歳以上の降圧目標値をあえて区別しなければならない理由は全くない.海外のガイドラインをみても,わが国のガイドラインのような年齢別に降圧目標を設定している国はもはや見当たらず,世界に類のないガイドラインとなっている.
高齢者高血圧における積極的降圧の有用性を証明したSHEP試験では,達成すべき降圧レベルについてサブ解析を行っている.実薬群もプラセボ群も一緒にして,一定の血圧レベルに達した症例と達しなかった症例についての脳心血管イベントの発症率について比較したのである.その結果,まず収縮期血圧160mmHgに達した症例と達しなかった症例の比較では,達した症例群のほうが有意にイベント発症が少なかった.次いで収縮期血圧150mmHg以下に達した群と達しなかった群についての比較を行ったところ,これも収縮期血圧150mmHg以下に達したほうが有意に脳心血管イベント発症が少なかった.次に収縮期血圧140mmHgに達した群と達しなかった群についての比較を行った.図1に示すように相対リスクは0.78と大幅に,140mmHg以下に達成した群のほうに傾いていた.しかし,95%信頼区間がわずかに有意に達していない.本試験は,血圧を140mmHg以下に下げましょうという試験ではなく,とりあえず,収縮期血圧を20mmHg以上下げるという試験であったために,140mmHg以下に下がった症例が少なかったことによって有意差がつかなかったのである.しかし先入観なしにこの図1をみて,140mmHg以下まで下げたほうが良好であることは明らかである.
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