危険がいっぱい―ケーススタディ・医療事故と研修医教育 第8回
複視とふらつきで救急外来受診した42歳の女性
田中 まゆみ
1
1聖路加国際病院内科
pp.1476-1479
発行日 2005年8月10日
Published Date 2005/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402100249
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今回の症例は,いつも通りの朝食後,物が二重に見えだし,さらにふらつきと寒気を覚えたため救急外来を受診した42歳の女性である.
アリス(司会役) 本日の症例は,「物が二重に見える」と救急外来を受診した特に既往のない42歳の女性です.
ベティ(症例提示役) その日,いつものように朝食を取ったあと,教会で座っていたら物が二重に見えたのだそうです.しばらく様子を見ていたのですが,自宅に帰るときにふらつき,寒気もしたので,心配する夫に付き添われてERにやってきました.ふだん診てもらっている開業医に電話をしたところ,すぐに神経内科医にERに来てもらうように手配するとのことで,それまで待つように言われたそうです.トリアージで血圧が80/54しかなく,脈も112と頻脈が認められたため,安定するまでは蘇生室でモニターをつけながら観察することになりました.体温は35.8℃.頭痛嘔気嘔吐はなく,下痢もなく,咽頭痛もなし.咳は昨日ぐらいから出ているが,特に気にも留めていなかったそうで,痰は飲み込んでしまうとのことでした.家族に病気の者はなく,旅行歴もありません. 既往歴も アレルギーも 服薬歴も 家族歴も特にありません. 社会歴は,タバコは20本/日吸うがアルコールはつきあい程度.麻薬歴は大学生のときマリファナをやっただけだそうです.夫と二人の高校生の子どもと住んでいる主婦です. ROS(review of systems)では,昨日からの軽い咳と今朝からの複視以外は特に変わったことはないとのことでした.
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