特集 提言—あすの公衆衛生
健康教育のBreakthrough
宗像 恒次
1
Tsunetsugu MUNAKATA
1
1筑波大学健康管理学
pp.39-42
発行日 1993年1月15日
Published Date 1993/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902940
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◆健康概念の転換
これまでの予防医学において健康は,病気になるリスクファクターを除去し,健康を維持するためにはどうすればよいかという視点でとらえられていた.リスクファクターとは,たばこの喫煙や食物摂取のアンバランス,運動不足,肥満,高血圧,予防接種をしていないこと,などといったリスク要因を除去するという方向で公衆衛生活動を行うというものである.しかしながら,なぜそのようなリスクファクターを持ってしまうのか,わかっていながらもどうしてそのリスクをとってしまうのかという,より根源的な背景にさかのぼって考えるよりも,リスクファクターの知識を与えて自分の意志で専門家に指示されたことを実行すればよいという含みがあった.本人がどう思おうが,「そのリスクファクターをとることがあなたの命を守る意味で大切だ」という一方的な善意があった.しかし,リスクファクターと分かりながらもそれを避けることができない自分,それはなぜなのかというところまでは踏み込めなかった.また病気をしてもただ症状がなくなればよいという観点での治療医学があった.
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