連載 機能訓練事業の危機・4
機能訓練事業を通して得たもの
村井 千賀
1
1石川県リハビリテーションセンター
pp.62-65
発行日 2002年1月15日
Published Date 2002/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902660
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病院でのリハビリテーションアプローチの限界
昭和61年,市町村が実施する老人保健法に基づく機能訓練事業の取り組みを支援するため,保健所に採用されることとなった.それまではリハビリテーション専門病院にて作業療法士として勤務し,患者が障害を持ちながらも残存機能を高め,潜在的能力を引き出し,できる限りの病前の生活に戻れるよう療法を提供してきた.院内での日常生活動作の自立はもちろん,主婦には掃除・調理能力の獲得,若い男性には職場評価から作業療法室での職業前訓練のシミュレーション,また必要に応じて公共交通機関の利用練習,デパートでの買い物練習,失語症の方たちとの喫茶店利用など,その人の生活に必要な能力の獲得に向け,療法を展開してきた.しかし一方では,体力や活動性の低下による寝たきり状態により再入院が繰り返され,病院外来受診が生活の日課になってしまっている人なども見られ,地域で高齢者や障害のある人々が生き生きと生活できるためには,医学的リハビリテーションアプローチ以外に,地域の受け皿づくりが必要であると感じていた.またさらに,病院という管理組織の中,屋外に出て一人一人の生活のため療法を展開するには病院長の理解,療法士が不在になれる体制(時間的余裕)が不可欠であるが,居住地が病院から遠い場合の支援ができない,どれだけ病院でシミュレーションしても個々に住む環境が違うため退院後様々な生活の問題に適応できないなどの問題があった.
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