特集 根拠に基づく公衆衛生の展開
成人病検診の根拠
矢野 栄二
1
1帝京大学医学部衛生学公衆衛生学教室
pp.28-32
発行日 2001年1月15日
Published Date 2001/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902431
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本稿の表題にある「成人病検診」という言葉を最近聞くことが少なくなった.従来,成人病検診は,産業保健の場合,法律で義務づけられた一般定期健診や特殊健診に対して,中高年の従業員に任意で実施する健康診断であり,健康保険組合が行う保健事業などとして行われることが多かった.この検診は義務的なものではないとはいえ,事業所が提供する人間ドックも合わせると1987年には,全事業所の47%で実施され,従業員千人以上に限れば98%の事業所で実施されるほど普及していた1).1988年の労働安全衛生法の改正において,この成人病検診の核心部分であった貧血検査,肝機能検査,血中脂質検査および心電図検査が,受診義務のある一般健康診断項目の中に組み入れられた.したがってこの時点から,従来の成人病検診の内容は法律的に根拠を持ったが,その医学的根拠については十分な検討があったのか疑わしい.本稿では,成人病検診のうちがんに対する検診は種々の点で状況が異なるので,含めない.
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