特集 難病と共に生きる
難病と共に生きる
平田 幸子
pp.852-855
発行日 2000年12月15日
Published Date 2000/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902410
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ALSの発病
私の夫は,現在47歳で,筋萎縮性側索硬化症(ALS;amyotrophic lateral sclersosis)で人工呼吸器を装着し,在宅で療養中です.家族は夫の両親(父77歳,母70歳),長男16歳,二男12歳,三男8歳の7人です.夫は平成8年8月初めごろより喉の違和感を訴え,「話にくい,長い時間話すと疲れる」と言っていました.1カ月ほどたって「首が痛い」と言い,首を起こす時は,身体に反動をつけてなんとか正面を向ける状態でした.10月に入って市内の体育祭で,子どもとジョギンクに出た時は,今にも倒れそうな様子で,黒いような顔色をして帰ってきました.私は心の中で「もうやめて,死んじゃうよ」と言い続けていましたが,声には出ませんでした.その後で,本人から,それまでにも呼吸が苦しかったこと,また,体重が減ったことなどを初めて聞き,急に私の中に不気味な,たとえようのない不安な気持ちが沸き上がってきました.それからすぐに,耳鼻科,整形外科,内科と診察を受けましたが,結果は3科とも異常なしでした.私は何か見落としがあるような気がして,毎日のように,「絶対おかしい,おかしい」と言って,病気のことを気にしないように努めている本人に対して,どんどん精神的に落ち込むようにしてしまっていました.12月に入って,腕が胸より上に上げられなくなり,服も自分では着られなくなり,本人もさすがにおかしいと思い,再度病院に行くことにしました.
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