特集 21世紀に向けての老人保健事業
がん検診への期待と役割
久道 茂
1
1東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野
pp.621-623
発行日 1999年9月15日
Published Date 1999/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902142
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わが国のがん対策は,これまで2次予防対策を中心に展開されてきた.それは,日本に多かった胃がんや子宮がんの原因が不明確で,短期の有効性が期待できる実施可能な1次予防策がなかったからである.もっとも,肺がんの1次予防としてはっきりしていた禁煙・喫煙防止対策がなかなか普及しなかったのは,行政の政策判断にもよるが国民の意識が低かったからといっても過言ではない.
昭和58年には老人保健法が実施され,その保健事業のなかに胃,子宮頸がん検診が組み込まれた.それ以来,がん検診受診者数は飛躍的に伸び,さらに肺がん検診,乳がん検診および子宮体がん検診が老人保健法第2次5カ年計画へ,大腸がん検診が第3次8カ年計画のなかに加わり,平成9年度の老人保健事業として行われたがん検診は五つのがん検診を合わせて年間約2,400万人が受診している.全国でみると,胃がん検診,子宮がん検診では100%,肺がん検診が94%,乳がん検診が98%,大腸がん検診が99%の市町村で実施されている.しかし,老人保健事業の第3次計画で示された最終年度(平成11年)受診率の目標値にはまだ達していない.
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