視点
21世紀に向けての地域保健—公衆衛生とコスト意識
前田 秀雄
1
1東京都府中小金井保健所
pp.226-227
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902054
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「21世紀に向けての地域保健」という未来志向のテーマにそぐわない後ろ向きな話題とは承知しつつ,最近世情で喧しい「コスト意識」について一言申し述べたい.近年の高齢社会における経済活力の維持を唱える気運に,構造不況が拍車をかけ,いまや一億総コスト削減社会の感がある.保健・医療・福祉といった社会サービスの分野にも,一連の法,制度の改定が矢継ぎ早に打ち出されている.しかしながら,こうした対応は,ともするとまずコスト削減ありきの拙速な論議に終始し,本末転倒な展開になりかねない.
老人医療費の抑制でコスト削減策の先陣を切った医療の分野では,医療システムの本質的矛盾により増加した医療費の抑制,保険財源の補填,入院・高額医療の「適正化」といった小手先のコスト削減策が行き尽くした.最近ようやく,寿命などの指標を考慮した医療の費用対効用など,医療の体質自体の変革という本質的なコスト意識に着手されはじめた感がある.しかしながら,生活の質のあり方や依存的医療の転換の論議に住民を巻き込まずに着手することは,その政策の実効性を著しく低下させる危険がある.
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