アニュアルレポート・1999
産業衛生学の動向
中屋 重直
1
,
角田 文男
1
1岩手医科大学医学部
pp.185-188
発行日 1999年3月15日
Published Date 1999/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902045
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日本産業衛生学会の変遷
昭和4年暉峻義等を初代理事長に,製鉄所や紡績工場の工場医らで設立された産業衛生協議会が現在の日本産業衛生学会である.暉峻は財閥大原孫三郎の肝いりで作られた倉敷労働科学研究所の所長である.戦前の研究は鉱工業の労働力強化が目的であるから,結核やペストなどの疾患予防と疲労や温熱などの労働環境対策が主題となった.劣悪な作業環境にあったから,水銀・鉛・二硫化炭素の各中毒や珪肺といった職業病の発生が多かった.それらが,戦後の産業衛生学研究の主要な流れを築いたのである.そして原因が解明した健康障害については,当然予防対策が優先とされた.にもかかわらず,現在も職業病の被災者が完全になくなったわけではない.戦後の産業衛生学の著しい進歩は間違いないのだが,原因がまだ解明されていない疾患もあろうし,犠牲が悲惨な状況を呈する直前に救っている例はいくらでもある.
こうして日本産業衛生学会は創立70周年を迎えるが,本年度の学会内容を要約して紹介して,斯界の今日の課題を展望したい.
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