連載 福祉部門で働く医師からの手紙
保健福祉の視点,法曹の視点
牧上 久仁子
1
1豊島区中央保健福祉センター在宅保健医療
pp.666-668
発行日 1998年9月15日
Published Date 1998/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901956
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最近,福祉関係の雑誌をながめていると痴呆性高齢者や知的障害者の権利擁護の観点から「財産管理」や「成年後見法」などという用語を目にすることが多くなりました.筆者の職場でも好むと好まざるとにかかわらず,「財産管理」の問題が持ち上がってきています.私たちの職場でも「財産管理」は大きな問題になっています.
事の起こりは保健婦がとある困難事例に巻き込まれたからでした.そのお宅は一見瀟洒な住宅街にありますが,よく見るとしゃれた門には幾重にも施錠され,門の中には雑多なゴミが堆積し……といった感じで,経験を積んだ「その道のプロ」だけでなく,御近所の方もなんとなくその住人の異様さを察知できる風格? を備えていました.そのお宅には案の定,末治療の精神分裂病と思われる40歳代の娘と,今となっては痴呆だか精神疾患によるものかもわからない妄想を抱えた70歳代の母親が住んでいました.父親はとある中堅企業に勤務し,引退後も社宅(現在の大きな一戸建て)にずっと住み続けることを認められる程度の役職についていたようです.父親が死亡した後も母娘は寄り添うように元社宅であるこの家に住んでいました.
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