連載 精神保健福祉計画の企画と実施—意欲を事業に反映するために
人口移動が精神保健福祉計画に与えた影響の可能性
西田 茂樹
1
1国立公衆衛生院保健統計人口学部
pp.590-593
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901940
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現在のわが国の人口問題としては,高齢化と少子化があげられることが多い.しかしながら,ほかにも人口に関する問題はいくつか存在し,その一つに過密と過疎の問題がある.わが国では1960年代の高度経済成長期ごろより,地方,農山漁村から大都会への人口移動が活発化し,その結果,大都会の人口が急増するとともに地方の人口が相対的に減少する現象が起こっている.このため人口の都市への集中が過度になり,そのことによって様々な問題が発生している.これらの問題は,従来,住宅,生活環境,交通といった社会資本の整備不足などの側面から論じられることが多く,医学・公衆衛生の領域でも人口の都市集中が引き起こした劣悪な環境に起因した疾病といった視点での議論が多かったと思われる.
しかしながら,都市への人口集中が始まって数十年たった現在,大都会ではなく,地方において従来想定されていなかった問題が精神保健分野において生じている可能性がある.これは,精神障害,特に精神分裂病の発症が10代,20代の若者に多く,同時に都市への転出者も若者に多いことに起因する問題である.
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