特集 公衆衛生の視点からみた事故予防
交通事故の疫学
谷原 真一
1
,
槙尾 崇
2
,
轟木 敦子
2
1自治医科大学公衆衛生学教室
2自治医科大学疫学ゼミ
pp.271-274
発行日 1998年4月15日
Published Date 1998/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901869
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人口動態統計(厚生省)によると1995年の不慮の事故による死亡は45,323人と全死亡原因中第5位であった.不慮の事故はとくに1歳から29歳での年齢階級にかけては死亡原因の第1位であり,若年者にとって重要な問題である.その中でも交通事故によるものは15,147人と不慮の事故全体の3分の1を占め,くも膜下出血の14,424人や肝硬変の11,301人よりも多い.交通事故死亡の予防は循環器疾患や悪性新生物の予防と同様に公衆衛生における重要課題の一つとして取り組む必要がある.
人口動態統計による交通事故死亡率を1985年モデル人口を用いた直接法による年齢調整を行った結果を5年間隔で男女別に図1に示す.すべての年にわたって男性の死亡率は女性に比べ3倍以上高い値を示した.これは,男のほうが外出する機会が多く,不慮の事故に遭遇する可能性が高いものであると説明されている1).また,人口動態統計特殊報告「自動車事故死亡統計」による1990年の自動車事故死亡者のうち自動車運転者およびオートバイ運転者・乗員の占める割合は,男性がそれぞれ26.1%,26.9%,女性ではそれぞれ10.8%,8.7%となっている.交通事故総合分析センター発行「交通事故統計年報」記載の1995年男女別免許保有者数から人口100人あたりの免許保有者数を求めると,男性では68.2人,女性では43.2人と男性は女性よりも多く,男性は運転する機会が女性より多いと考えられることにも関連すると思われる.
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