特集 コミュニティヘルス・アプローチの昨日,今日,明日
スウェーデンの公衆衛生の史的総括
竹﨑 孜
1
1埼玉大学経済学部社会環境設計学科
pp.168-172
発行日 1997年3月15日
Published Date 1997/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901654
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社会と生活の変化
「2000年までに健康をすべてのひとに」とは国連のWHOによる宣言であったが,スウェーデンではどのように受け止められてきたのであろうか.先進国としての国際的な評価が与えられるスウェーデンでは国民が健康に恵まれ,WHO目標の到達がさしせまったものとは受け止められてはいないものの,しかし,社会に備わった特性から派生してくる諸問題あるいは課題は少なからず残されている.そして今日のスウェーデンにおける社会動向のうちとくに代表的なのが“社会の高齢化”そして“女性の勤労”であろう.
最初の高齢者の多さは,1993年の平均寿命が男性75.5歳,女性80.8歳とわが国とともに世界最高位に属し,さらに高齢化率すなわち人口全体に65歳以上が占める割合のほうも17.4%と,その高さでは他国に比類がなく,高齢化社会の段階ははるか後にして,もはや完全に超高齢化の時代に入ってしまった.スウェーデンにおいて起こった社会高齢化は加速的に進み,1985年には高齢化率が17.9%と現水準をさらに上回っていた.平均寿命のほうも過去10年間だけを見ても男性が1.9歳,女性が1.2歳と伸び,こうした傾向は今後も続いていくものと予測され,男女の寿命は一段と接近する傾向が認められるとしている(図1).
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