特集 生活をささえる防災計画—阪神・淡路大震災の教訓
現代の防災計画—公衆衛生の立場から
高鳥毛 敏雄
1
,
高橋 進吾
1
,
多田羅 浩三
1
1大阪大学医学部公衆衛生学教室
pp.238-244
発行日 1996年4月15日
Published Date 1996/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901455
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戦後50年の節目の年頭に,兵庫県南部地震が発生し,未曾有の阪神・淡路大震災に見舞われてから早くも一年を経ている.わが国は,災害大国であり,過去に幾度もの自然の災害にさらされながらも災害対策を強化し復興してきて「災害に強い国の1つである」と少なからず自負していた面もあった.しかしながら,兵庫県南部地震による被害状況をみると,戦後の復興とその後の高度経済成長の時期において,都市の構造や危機管理体制などについて災害に対する備えが十分でなかったことが露呈され,あらためて災害時に対応した計画の見直しが迫られることになった.
今回の震災によって明らかになった最大の課題は,災害時における救急医療の対応と併せて,長期にわたる被災者の生活をどう支えていくかということであった,と思われる.この点,これまでの防災計画の中では,応急的対応(救護),経済的支援や生活の場(避難所,仮設住宅)の提供についての視点はあるが,生活を支える人的支援や自立への支援についてはその記載が極めて不十分であり,今回の震災の経験をもとに保健活動に対する十分な体制を準備する必要があると考えられた.
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