特集 精神保健福祉法と精神保健活動の新たな視点
精神保健福祉法改正の評価をめぐって—民間施設の立場から
東 雄司
1,2
1麦の郷障害者地域リハビリテーション研究所
2和歌山県立医科大学
pp.117-120
発行日 1996年2月15日
Published Date 1996/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901427
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精神障害の一当事者から最近,「日本の精神障害者には精神病に,しかもこの国で患う二重の不幸があると呉秀三が嘆いた明治時代の状況は今日でも何ら変わっていない.だから三重の不幸を背負っている.」と怒りに似た声を聞いた.隔離収容主義という精神医療に対する国際批判に対応し,1987年には精神保健法が改正され,ようやく社会復帰体制づくりが始まったが,1993年には一部見直しがあったとはいえ趣旨としては精神医療の域内にとどまるものであった.同年12月に精神障害者が障害者基本法の対象として明確になったことにより,精神障害者の福祉施策が飛躍的に前進するだろうという期待は大きかった.今回,精神保健および精神障害者福祉に関する法(略称,精神保健福祉法)として,福祉という名をのせての法改正はわが国における精神障害者の処遇を一歩前進させるものとして,日本精神病院協会や全国精神障害者家族連合会などからは基本的に歓迎されているが,全国共同作業所全国連絡会など福祉関係者からは前向きの評価をほとんど受けていない.医科大学の教授職から転じて今では精神障害者の地域生活を支援するための一民間施設に関係することになった筆者には,新法に対する福祉関係者のこうしたネガティブな態度はよく理解できるところである.その理由は今回の法改正の意図は精神医療公費負担を医療保険に肩代わりさせることにあったことからまず意気をそがれたことにもよる.
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