保健活動—心に残るこの1例
エイズ相談に来所したNさん夫妻
吉永 陽子
1
1川崎市宮前保健所
pp.138
発行日 1994年2月15日
Published Date 1994/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900980
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あたりをうかがうように相談室に入ってきたNさんは,きちっとネクタイをしめていかにもまじめそうな印象を受けた.最初の説明(検査のシステム,秘密が守られること等)を遮るように彼は言った.「たった1回だけなんです.」話は次のような概要だった.10年前,転勤先で婚外交渉を持った.忘れていたのだが,今年になって風邪が治らない.マスコミから得た情報によると自分の今の症状がよく似ているし,潜伏期間が長いと聞いたが発病するとすればちょうどあてはまる.自分はエイズに違いない.ろくろく仕事にも手がつかずミスばかりしてしまう,検査に行くと決めてからはいよいよ不安が募り,ここ2,3日は会社を休んでいる.眠れなくて消耗しきっている彼に,私は精神科の受診を勧めた.
「主人の結果を見せて下さい.」
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