保健活動—心に残るこの1例
精神障害者の社会復帰にはたす家族の役割
松並 順子
1
1福井県鯖江保健所
pp.879
発行日 1993年12月15日
Published Date 1993/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900940
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そろそろ午後5時という時間に電話が鳴った.兄のことで今から相談に来たいという.声に真剣さを感じ,勤務時間外になることを承知で面接に応じた.弟は32歳,東京在住,明後日には東京に戻るとのこと.相談内容は「兄(M氏)が家にこもりがち,話をしても辻つまが合わない,緊張感があり口ごもる,そわそわして落ちつかない.6年前にも独語があっておかしいと思い精神科受診を勧めたが,本人が拒否した」とのことで,翌日の訪問を約束する.
訪問するとM氏は不在で父と弟夫婦が在宅していた.M氏は保健婦の訪問を拒否し,朝いつもより早く起きて出かけてしまったとのこと.父がM氏の状況を話す.地元大学卒業後教員となったが2年で退職,その後自閉的生活を送る.M氏は緊張感強く音に敏感.食事も高級料理店で食べている雰囲気で息詰まるため,別々にしている.外では道の隅を下を向いて歩き,人と視線を合わせない.2人暮らしのため何かとM氏のことが目につくため,生活時間帯をずらしている.M氏はプライドが高く扱い方に苦慮している様子.次回訪問日を約束する.2回目の訪問ではM氏が在宅しており,拒否感はなかった.
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