講座 10代のこころを診る—思春期相談のために・10
うつ病と自殺
齊藤 万比古
1
Kazuhiko SAITO
1
1国立精神・神経センター国府台病院児童神科
pp.731-734
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900903
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「ただ………ただ,僕は感じる………僕はだめなんだと感じちゃう,何か僕が悪いって.自分がもうだめなんだと,何もできないって感じるのは,本当につらいんだ.」
1.はじめに
文頭に引用した言葉はD.マックニューらの著書(栗田 広訳『子どものうつ病』,晶文社,1991)の中でうつ病の高校生が面接者に語る自分の感情の描写である.このような落ちこんだ,元気のない,あるいは死にたがっている子どもはうつ病と診断されるような心の病気である可能性がある.従来,うつ病は十代後半にあたる青年期以降の大人の世界の現象であり,十代前半の思春期年代以前にはほとんど生じないとされてきた.しかし現在では,十代前半以下の小中学生や幼児の間にもうつ病が生じることはそれほど珍しくないと考えられるようになっており,多動,登校拒否,非行,自殺など様々な子どもの問題の背景にうつ病が存在する可能性に注目が集まるようになってきている.
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