特集 明日の医師像と医学教育
“明日”の医師像
垂井 清一郎
1,2
Sei-ichiro TARUI
1,2
1大阪大学
2大手前病院
pp.379-382
発行日 1993年6月15日
Published Date 1993/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900815
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◆歴史的な—考察
医療は,人類とともに古い人間の営みであり,さらにその原初的な行動は高等動物においてさえ認められる.医師の進むべき道を説いたいわゆる「ヒポクラテスの誓い」にまで,進歩洗練されるに至った気の遠くなるほど長い過程を考えるならば,「あるべき医師像」が突然変貌を遂げるなどとは到底考えられない.過去の医師たちの営々とした努力の結果築かれた多くの規範は,今日といえども,大部分正しさを保っている.例えば,「ヒポクラテスの誓い」の中にある次のようなくだり,「…書きものや講義その他あらゆる方法で私のもつ医術の知識をわが息子,わが師の息子,また医の規則にもとづき約束と誓いで結ばれている弟子どもに分かち与える.…私は能力と判断の限り患者に利益するとおもう養生法をとり,悪くて有害と知る方法を決してとらない.…女と男,自由人と奴隷のちがいを考慮しない.医に関すると否とにかかわらず他人の生活について秘密を守る」.などは,思想としてのレベルも高く,ほとんど千古不易といっても過言ではないであろう.
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