保健行政スコープ
石綿とその代替品の労働衛生対策について
星 北斗
1
1労働省労働基準局安全衛生部化学物質調査課
pp.372-373
発行日 1993年5月15日
Published Date 1993/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900813
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1.はじめに
石綿は癌原性物質としての評価がある一方で,優れた特性と長期間にわたって使用されてきた実績を持つ物質である.石綿をめぐっては,様々な議論があるが,有用な物質であり有害性や管理の手法が確立していることから,十分な管理のもとに今後も使用していくべきであるとの考えが一般的である.しかし,石綿の存在そのものが危険であり,使用や製造だけでなく現在使用されているすべての石綿をも除去してしまうことが必要であるとの立場もある.
石綿の有害性が指摘されて以降,これを他の物質に代替化する動きが盛んになり,近年では石綿の使用範囲を超える優れた特性を持つ新素材としての側面を持つ物質も開発されている.また,これらの代替物質についても,その有害性が近年指摘されるようになっているが,代替物質は安全なものであるとの認識が未だ一般的である.
このような現状に鑑み,代替物質の有害性は未だ確定していないが,使用量,使用範囲が広いガラス繊維とロックウールについて,労働衛生管理の徹底を求めた指針が,本年1月に行政指導通達として示されたが,本稿ではその背景や考え方について石綿対策との関係において考察する.
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