新しい保健活動の視点
松尾保健所のいきいき地域活動
野島 尚武
1
Hisatake NOJIMA
1
1千葉県松尾保健所
pp.347-350
発行日 1993年5月15日
Published Date 1993/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900806
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「保健所は何をするところぞ」と聞かれれば,「公衆衛生の実践の場だ」と答える.「公衆衛生とは」と問われれば,WHOは明白に,「組織体によるすべての個人のための健康に関する科学と技術」という.人類は単独に暮らすにはあまりにもひ弱い.組織体を作り,お互いが助け合うというのが基本である.状況次第では,組織体が生き残るために他と男が戦って死に,疫病時には患者は隔離され見殺しにされた.
しかし,幾多の試練,戦争,虐殺,偏見を経て,公衆衛生は組織体の健康より個人(弱者としての)の健康を重視することが正しい,と見られるようになった.時の政治が弱者を見捨ててきた歴史からの反省の意味で,個人を強調する必要があった.我々も知らず知らず,公衆衛生とは個人個人をこまめに救っていくことであるとして,これに慣れてしまったらしい.厚生省も政策としては弱者救済の項目を久しく数えあげて来た.気付いてみたら個人衛生以外の個人の集団である組織体の健康を譲る,本来の公衆衛生の仕事に関するノウハウが蓄積していない.
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