保健婦活動—こころに残るこの1例
へき地で一人暮らしを続けるYさん
田中 冨美子
1
1京都市中央老人福祉センター
pp.645
発行日 1992年9月15日
Published Date 1992/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900652
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右上肢の先天性奇形を持つYさんの精神分裂病が発病したのは約42年前,中学校卒業後の事でした.当時は大学病院などに入退院を繰り返していましたが,医師から「治る見込みはない」と宣告され,両親の思いから帰郷しています.その後十数年間は治療もせず,家でブラブラと過ごす陰性症状が続き,遠くに住む姉や弟はたまにしか帰りませんでした.近くに住む従弟たちは,Yさんや高齢の両親の生活を気にかけていましたが,「弟がいるのだから何かあれば入院させるだろう」と積極的な関わりを避けていました.
Yさんの精神症状は数年単位で一進一退し,私が初めて訪問した10年前も,47歳の彼は不眠・幻聴・独語などによる社会的不適応状態でしたが,すでに高齢の両親はYさんの治療や社会復帰に対する期待を失っていました.
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