現代の環境問題・27
地球規模汚染—フロンによるオゾン層破壊
富永 健
1,2
Takeshi TOMINAGA
1,2
1東京大学医理学部
2東京大学アイソトープ総合センター
pp.490-492
発行日 1992年7月15日
Published Date 1992/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900610
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1.はじめに
これまでは,環境問題といえば排水中の重金属や,大気中の工場・自動車排ガスなどがもたらす「公害」が中心であり,これらの問題の多くは,その後の対策によって改善されて来た.一方では,産業や生活の様態の変遷とともに,新たに発生した公害も少なくない.このような従来の「公害」に共通していることは,影響の及ぶ範囲が局地的な,地域環境の問題であるという点である.
数年前から,このような地域環境問題とはまったく異なったタイプの問題が世界的に注目を集めるようになった.フロンによるオゾン層破壊や,二酸化炭素などによる地球温暖化のような地球規模の環境問題である.これらは,原因となるフロンや二酸化炭素がどこで放出されても,最終的には地球大気全体に拡散して影響を生ずるために,地球環境問題と呼ばれている.このような問題では,原因となるフロンや二酸化炭素は生物に直接有害な物質なのではなく,複雑な地球システムのバランスを乱すことによって,結局は生物の生活環境を破壊することになる.
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