保健婦活動—こころに残るこの1例
夫婦愛に支えられた在宅ケアの思い出
今西 浩美
1
1奈良県健康対策課
pp.656
発行日 1991年9月15日
Published Date 1991/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900428
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寝たきり老人や病人の在宅ケアの中で,家族の果たす役割の大切さと苦労に今さらながら,保健婦活動のあり方を考えさせられているこの頃である.ともすれば家族に期待をかけすぎ,患者さんにとっての思いが先立ち,あの方法やこの方法がよいなどとお願いをし,家族の生活を無視してしまうことがある.O江さん夫婦との出会いは,私にとってよりよい在宅ケアのあり方,また人として生き方を考えるという点で,大いに反省し励みになったケースである.
O江さんとの出会いは,町ヘルパーからの紹介を受け,朝夕の冷えこみがこたえるようになった秋の日に訪問した時から始まる.O江さんは,10年前より脊髄小脳変性症のため,悪化しては入退院を繰り返し現在に至っている.その時は,夫と事情があって別居生活をしており,公団住宅で比較的移動に便利な1階に住んでいた.この頃の状態は,膀胱障害のために自立排尿が出来ず,補助具によって排尿を行うことや,物につかまりながらゆっくり歩くことに不便を感じていたが,買物や食事など日常生活はなんとか自立していた.しかし,寒くなるにつれて状態が悪化し,歩行困難をきたしてきた.
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