講座
大学における衛生学・公衆衛生学の教育
公衆衛生編集委員会
pp.265
発行日 1959年4月15日
Published Date 1959/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202127
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1866年に世界最初の衛生学教室がMünchen大学に設置され,Max von Pettenkoferが医学生に対して衛生学を講じてより,医師養成の教育課程に衛生学が採用されることになつたことは周知のことであります。医科学生に衛生学の教育が必要であることは今あらためて申し述べるまでもないことですが,衛生学自身が,Pettenkofer時代と,百年の進歩を辿った今日とでは全く変つてしまつているところに問題があると思われます。当時は細菌学も未だ独立しておりませんし,医療保障は全く経済問題の範囲を脱しておりません。医学の応用科学と申しましても衛生学は未だ独特の系統をもつ学問とは云えない様な状態であつた訳です。
現在では衛生学は単なる衛生学と申すには余りにも広範な分野を包含しておりますので公衆衛生学と衛生学の両名称を並べ用いなければ一股的でない程に拡大された応用医学の系譜をもつ様に成長しております。分野は臨床医学各科の応用部門のみでなく,基礎医学でも含まれるものが多く,さらに統計学,経済学,社会学,心理学,教育学等人文科学それぞれの応用科学といえるまでに発展したのであります。殊に戦後における急激な進展は驚異の的でありまして,およそ直接疾病と関係のない保健百般は衛生学・公衆衛生学の専門分野の如くに見なされる程であります。
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