特集 中小企業の健康問題
地域共同健康管理体制の推進
山根 洋右
1
Yosuke YAMANE
1
1島根医科大学環境保健医学
pp.470-474
発行日 1990年7月15日
Published Date 1990/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900132
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■はじめに
日本の経済発展は,1986年を景気の谷として拡張に転じ,88年5.1%と実質GNPを伸ばしつつ,高度成長初期の「神武景気」を追い抜いて大型景気を持続している.科学技術革新を挺子に,設備投資も高水準を保ち,電気機械,リゾート開発,不動産,情報処理システムに向かって投資が動き,とりわけ国際化,情報化を背景に知識集約産業への資本集中は激しい.このため,ますます産業構造は高度化し,第一次産業は衰退し第三次産業は肥大化していく.資本が競合するなかで企業経営の多様化,複合化は,今までの高度成長や大企業を支えてきた下請け,孫請けといった国内垂直分業体制とその重層構造化を強め,さらにパート,アルバイト,派遣労働者,外国人労働者,高齢労働者など労働力市場の裾野を広げている.
一方,このような経済発展は,国際的経済摩擦とともに,国内における労働者・農民の実質的な生活困難,高齢化社会における社会福祉の後退,ドラスティックに進む環境生態系破壊などの深刻な問題を激化させてもいる.中小零細企業の経営基盤の脆弱性と貧困な健康管理体制も,これら日本経済発展の影の一つといえよう.
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